背景: 再生可能エネルギー普及の障害(洋上風力発電)
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このページに書いてあること 1) 浮体式洋上風力発電は再生可能エネルギーの切り札 2) しかし、適切な場所が少なく送電にコストがかかりすぎる 3) 技術的なブレークスルーが必要 |
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![]() 図1 世界の再生エネルギー発電量内訳と新規風力発電導入量の推移 |
風力発電は、地球温暖化対策としてでなく、国内のエネルギー源を活用できることからエネルギー自給率の向上という観点でも重要です。
図1の世界の再生エネルギー発電量内訳で示すように、世界では再エネの50%程度は風力発電です。
2020年の世界の新規風力発電容量は93GWで、陸上風力86.9GW(黄緑色)、洋上風力6.1 GW(青緑色)。全発電容量は2015年以降、年平均8%の伸びを示し、洋上風力発電のシェアは2017年以降、7.1%となっています。
日本では再エネの主流は太陽光発電ですが、風力発電も徐々に増加し、特に最近は洋上風力発電が注目されています。
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![]() 図2 洋上風力発電の国別導入量と日本の風力発電導入ロードマップ |
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洋上風力発電は、図2に示すようにイギリス、ドイツ、デンマークなど北ヨーロッパでの導入が進んでいます。また、最近では中国でも急速に導入が進んでいます。
これらの地域では発電に適した遠浅の海の面積が大きいためです。洋上風力発電は再エネとして重要ではありますが、それに適した地形が世界中で限られていることが問題です。
日本の風力発電の導入ロードマップを図2に示しました。これはビジョンであり、この通り実現するには解決すべき課題も残されています。
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![]() 図3 洋上風量発電と海底直流送電(https://mainichi.jp/) |
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図3の左上に示したように洋上風力発電には、着床式と浮体式の2種類があります。 着床式は、これまで洋上風力発電として一般的に用いられてきた方法で、風車の基礎となる支持構造物を海底に直接埋め込み固定する方式です。 着床式は、水深50mを越える海域では採算性が悪くなるため、遠浅の海のようにある程度条件が整った場所にしか導入できません。 これに対し浮体式は、洋上に船舶のような浮体構造物を設置し、海底のアンカーに繋ぎ止めておく方式です。 浮体式のメリットは、水深50mを越えるより広い海域で洋上風力発電が利用可能になることです。 しかし、陸上式の風力発電に比べると、風車や基礎の設置工事などに約2倍のコストがかかり、運転開始後のメインテナンスにも、陸上風車とよりは多くの費用を要します。 深い海域での洋上風力発電の最大の問題は海底送電ケーブル設置の莫大なコストです。 日本では北海道の西側が洋上風力発電に適していると言われていますが、そこから日本海を海底ケーブルで新潟まで送電するのに1~2兆円の投資が必要になります。 これにより、発電コストが増加し、消費者の負担が増えることになります。 洋上風力発電は、社会受容性も大きな問題になります。海底に基礎やケーブルのアンカーを固定すると付近での漁業に大きな影響を与えます。 このため漁業者など海面利用者の理解なくして洋上風力発電は成立しません。 また、陸地に近い海域に設置した場合は、低周波騒音問題も発生します。 さらに、近年、新たな問題として浮上しているのは安価な中国製タービンの市場拡大です。 国際競争入札を行うので安い業者が受注するのは致し方ないのですが、国の助成金を使い非常に高い価格で導入する発電設備の利益のほとんどが、中国企業に行って良いのかという議論が起きています。 国として洋上風力発電を推進するばらば、日本企業しか作れない日本の独自技術を開発しなければなりません。 後で詳しく述べますが、上に述べた浮体式洋上風力発電の問題は、非係留式の洋上風力発電機を開発し、高性能蓄電デバイスを搭載した船舶で電力を輸送することで全て解決します。 つまり、洋上風力発電の大規模な利用には、 | ||
| 高性能蓄電デバイスの開発が必要になります。 | ||
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