背景: 蓄電デバイスはカンブリア紀
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このページに書いてあること 1) 蓄電デバイスはカンブリア紀と呼ばれるほど、 最近、多様な技術が提案されている。 2) しかし、最も優れた蓄電デバイスは電気エネルギーを エネルギー変換無しに蓄えるキャパシタ |
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これまで述べてきたようにEVと再生可能エネルギーの広範囲な普及のためには、優れた蓄電デバイスが必要となります。
これまで非常に多くの研究者が蓄電デバイスの開発に取り組んできていて、多くの新しい方式が提案されています。
そのため蓄電デバイスはカンブリア紀とも呼ばれています。
つまり、多様な生物が生まれている時代というわけです。それらの蓄電デバイスの個々について、このHPで紹介することはできませんので、もしも興味のある方は2013年までのデータでしたらElectricity Storage Handbook (SANDIA REPORT)を参照してください。 Wikipediaで"Energy storage"を検索すると多くの方法が記載されていますが、その中で電気を蓄える蓄電デバイスだけを抜き出すと次のようになります。 Mechanical Compressed air energy storage (CAES) Fireless locomotive Flywheel energy storage Solid mass gravitational Pumped-storage hydroelectricity (揚水発電) Electrochemical (Battery Energy Storage System, BESS) Flow battery Non-rechargeable batteries Rechargeable battery (Secondary cells) LIB, NaS, Metal-air etc. Electromagnetic Superconducting magnetic energy storage (SMES) Electrical Capacitor | ||
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代表的な蓄電デバイスを1秒あたりの蓄電量と放電速度で分類し下の図に示します。 | ||
![]() 図1 蓄電デバイスの1秒あたりの蓄電量と放電速度による分類 | ||
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図1より、揚水発電は最も蓄電量が大きいですが放電時間も長く、リチウムイオン電池とキャパシタは、蓄電量は小さいですが比較的放電速度が速いことがわかります。
蓄電量の大きさは設備の大きさにほぼ比例します。すなわち、図1の横軸は設備のサイズと考えることができます。
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以下で今後の議論で重要となる3つの蓄電デバイス、揚水発電、リチウムイオン電池(LIB)、キャパシタについて説明します。 | ||
![]() 図2 揚水発電、リチウムイオン電池(LIB)、キャパシタの充放電プロセス |
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図2で、揚水発電とは発電所をはさんで上部と下部のダムを築き、水を貯えるための調整池を作り、上部調整池から下部調整池に水を流下させて発電します。
充電過程では水を下部貯水池から上部貯水池にくみ上げ 、放電過程ではくみ上げた水を下部貯水池に落とすときにタービンを回して発電します。
この意味で、揚水発電は電気エネルギーを機械エネルギーである重力エネルギーに変換して蓄えます。
現在、世界で使用されている蓄電デバイスの95%程度が揚水発電になります。大きなエネルギーを蓄えることができますが、自然の地形を利用するので設置場所が限られるという問題もあります。
リチウムイオン電池は、正極中のリチウムイオンを負極である黒鉛中まで移動することで電気エネルギーを蓄えます。 この時、正極はリチウムイオンが入った状態から抜けた状態に負極はその逆に変化し、その変化に伴い両物質のエネルギー状態は変化します。 このエネルギーは化学エネルギーなので電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄えています。 放電はその逆でリチウムイオンが負極から正極に戻るときにエネルギーを放出するのでそのエネルギーを電気エネルギーに変換しています。 充電状態にある正負両極が物理的に接触すると、リチウムイオンは直接元の状態に戻り、その時のエネルギーは熱エネルギーとして放出されます。 これはセルの加熱や発火をもたらすので、電解質の中には両者を隔てるセパレータが必要になります。 リチウムイオン電池はエネルギー密度、充放電効率が高く、特性が充放電プロせスに依存しないなど多くのメリットがあるので、スマホ、PCなどOA機器やEVなど、非常に広い分野で使われています。 その反面いくつかの問題点もあります。EV用電池としての問題点は既に述べました(BEV普及の障害)。 キャパシタ(正確には電気二重層キャパシタ)は、電解質中の正負イオンを電気をかけることで電極に引き寄せることで静電エネルギーを蓄えます。 イオンの移動はリチウムイオン電池と似ていますが、決定的な違いは、電池ではイオンが電極材料の内部に入って電極材料の化学エネルギーを変化させるのに対し、 キャパシタのイオンは電極の中には入らずに表面に集まるだけです。一般的にはキャパシタに蓄えられる電気エネルギーの量は少なく、また、蓄電しても徐々にエネルギーが失われてしまうという欠点があります。 ここでもう一度Wikipediaで検索して得られたEnergy storageのリストを見てください。この分類は電気エネルギーを蓄えるときのエネルギー形態別です。 ここで注目していただきたいのが最後のElectricalです。蓄電デバイスに蓄えられるエネルギーは電気エネルギー(Electrical energy)ですから、 ここでElectricalと書かれているということは、他のデバイスが電気エネルギーを何かのエネルギー(機械、化学、磁気)に変換して蓄えるのに対し、 唯一、キャパシタだけが電気エネルギーを電気エネルギーとして蓄えることができることなります。 実は、蓄電デバイスの問題となる劣化や損失はエネルギー変換部で生じる場合が多いので、エネルギー変換を使わないキャパシタが原理的に最も優れた蓄電デバイスになります。 つまり、現在の状況は蓄電デバイスのカンブリア紀と呼ばれていますが、今後、誰が何を何年研究しようが原理的に最も優れた蓄電デバイスはキャパシターであることに変わりはないのです。 キャパシタにも多くの種類があります。しかし、実用化されている全ての製品の主要生産国は実は日本なのです。 この意味で日本はキャパシタ王国とも呼ぶことができ、これまで基礎研究から応用研究に至るまで、キャパシタの開発に日本人研究者の果たした役割は非常に大きいのです。 そうなると、地球温暖化を抑制するための最重要技術である蓄電デバイスの開発で、日本が最も有利な位置にあるということもできます。 新しい技術を開発するときに成功する秘訣は、原理的に最も優れた技術を選択しトライすることです。その技術に少しでも馴染みがあれば言うことはありません。 その意味で、 |
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| 日本が開発をトライすべき蓄電デバイスはキャパシタです | ||
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