エナジー ストレージ マテリアルズは蓄電用HV固体イオンキャパシタ(HV-SIC)の技術指導を行うベンチャー企業です





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電池とキャパシタの比較: エネルギー密度


このページに書いてあること

 1) 電池のエネルギー密度は化学反応が同じならば、原理的に
  上げることはできない
 2) キャパシタのエネルギー密度が上げられることは理論的
  に説明でき、実証されている。


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重量あたりのエネルギー密度(Wh/kg)は蓄電デバイスにとって最も重要な性能指標です。 電池とキャパシタでは、エネルギー密度の上限を決める要因が全く異なりますので、ここではその点について解説します。

まず、基礎知識として物理量には示量変数と示強変数の2種類があることをご理解ください。 両者の違いは、系の大きさ(物質の量や体積)を変えたときに、その物理量が系の大きさの変化に比例するかどうかで決まります。 物質の量や体積に比例する方を示量変数、しない方を示強変数と呼びます。 具体的には、示量変数には電流や化学反応のエネルギーなどがあり、示強変数には電圧や温度があります。

示量変数には相加性があります。相加性とは足し合わせることができるということです。 例えば、アパートに2つの部屋があって片方の部屋で100Vで10Aの電気を消費し、もう片方の部屋で100Vで5Aを消費している場合、アパート全体の電流消費量は15Aとなりますが、電圧は200Vにはなりません。 これは、電流は示量変数であるのに対し電圧は示強変数だからです。温度も示強変数です。片方の部屋が30℃でもう片方の部屋が25℃であってもアパート全体の温度は55℃にはなりません。


図1 電池とキャパシタのエネルギー密度

図1に電池とキャパシタのエネルギー密度の違いを示します。
電池は電気エネルギーを化学反応のエネルギー(化学エネルギー)に変換して蓄えますが、化学エネルギーは典型的な示量変数です。 つまり、電池に蓄えられるエネルギーは反応に関与する物質量に比例します。したがって、電池に蓄えられるエネルギーを2倍にしたければ電極活物質の重量を2倍にする必要があります。 しかし、エネルギーは2倍にしても重量が2倍になったのでは、蓄電デバイスの重要な性能指標であるエネルギー密度を上げることはできません。 つまり、電池のエネルギー密度は、化学反応と電極活物質が同じならば一定値となります。

一方、誘電体の厚みを半分にすれば、キャパシタに蓄えられるエネルギーを2倍にすることができます。これは静電容量Cが厚みに反比例するためです。 キャパシタの電極は非常に薄くすることができるので、その重量を無視すれば、誘電体の厚みを半分にすることでキャパシタの重量も半分になるので、エネルギー密度は4倍になります。 さらに電圧は示強変数なので、物質量に関わらず自由に変えることができます。例えば、誘電体の厚みを半分にして、さらに電圧を2倍にすれば、蓄えられるエネルギーはなんと16倍にもなるのです。 電池の研究者に、「あなたの研究している電池のエネルギー密度を16倍にできますか?」と聞いたときに「できる」と答える人は絶対にいません。実際は2倍にすることも非常に困難なのです。

このようにキャパシタのエネルギー密度には理論的な限界が無く、努力次第でいくらでも上げることができます。このことは積層セラミックスキャパシタ開発の歴史で既に証明されています。


図1 セラミックスキャパシタの容量密度の推移

セラミックスキャパシタに使われる材料はチタン酸バリウムというセラミックスです。 チタン酸バリウムは1942-1944年に日本、米国、ソビエト連邦で独立に発見されました。この期間は戦争中だったので日本の発見は独自なものでした。 戦後になって、チタン酸バリウムを使ったキャパシタは実用化され、厚みを薄くしてそれを何層も重ねるという積層技術により小型化に成功しました。 積層技術で作製するセラミックスキャパシタを積層セラミックスキャパシタ(Multi-Layered Ceramic Capacitor, MLCC)といいます。

積層技術ができる前のキャパシタは、図2にあるような戦争中の通信機などに使われていました。この時の1台の通信機に使われるキャパシタの数は70-100個程度でした。 これに対し現在のスマートフォンでは、小さなボディの中で700-1000個のMLCCが使われています。 2つの通信機の体積を比較し、使われているキャパシタの数を比較すれば、技術の進歩により体積容量密度が桁違いに高くなっていることがわかります。 体積容量密度とは単位体積あたりの静電容量Cです。 実際に体積容量密度の推移をみますと、80年間で何と1000万倍にもなっていることがわかります。

キャパシタに蓄えられるエネルギーはW=(1/2)CV2ですので、電圧が同じならば、体積容量密度の増加はエネルギー密度と等しくなります。 電源電圧の低下と体積密度から重量密度への変換を考慮しても、セラミックスキャパシタの重量エネルギー密度は80年間で100万倍程度増加しています。
これに対し、電池の場合は、1950年代に作られた乾電池と2020年に作られた乾電池のエネルギー密度はほとんど同じです。 電池のエネルギー密度は、化学反応が同じで電極活物質が同じならば技術が進歩しても上げることはできませんので、これは当然の結果です。 したがって、電池のエネルギー密度を上げるには、化学反応と活物質を変えるしかないのです。


図3 電池とキャパシタのエネルギー密度向上のための技術開発の違い

MLCCのエネルギー密度の向上は、単純化すればチタン酸バリウムセラミックスの薄層化というたった1つの技術の進歩により成し遂げられています。 つまり図3に示すように、キャパシタでは同じ技術の高度化によりエネルギー密度の向上が可能なのです。
これに対し電池の場合は、エネルギー密度を向上するには全く新しい電池に乗り換えなければなりません。 それに付随し、電解質と電極活物質の新規開発、製造プロセスの開発、劣化対策、発火対策、バッテリーマネージメントシステムの開発などが必要になります。

地球温暖化を抑制し日本のエネルギー自給率を向上し、さらに、日本経済の競争力を高めるには、高エネルギー密度を有する蓄電デバイスの開発は必須です。
技術者であるあなたに質問します。これからトライするとしたら、

電池とキャパシタのどちらを選びますか?

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