エナジー ストレージ マテリアルズは蓄電用HV固体イオンキャパシタ(HV-SIC)の技術指導を行うベンチャー企業です





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電池とキャパシタの比較: 劣化の問題


このページに書いてあること

 電池は劣化するがキャパシタは劣化しない


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充放電の繰り返しにより起こる特性の劣化はLIBを使う上で最大の問題です。 BEVの場合は、この劣化によりリセールバリューが低下し、電池交換にも多額の費用がかかります。 定置型電源としての利用でも、電池劣化のためのセル交換には大変な労力とコストがかります。 何よりも問題なのは、電池に寿命があるために使用済電池が大量に廃棄されることです。 高価なニッケルやコバルトについてはリサイクルも考えられていますが、リチウムは現状では困難です。 さらに、最近の電池価格の低下によりリサイクル自体が成立しなくなりつつあります。 そうなれば、環境破壊にもなりますし貴重な資源の無駄使いにもなります。



図2 リチウムイオン電池の劣化

LIBの正極材料には、三元系、リン酸鉄系、チタン酸系の3種類が使われます。図2に示したようにこれら3種類の電極材料でエネルギー密度とサイクル寿命は相反する関係になっています。 つまり、エネルギー密度の高いものは早く劣化し、低いものは寿命も長くなります。この理由について説明します。

正極材料は結晶中のリチウムイオンを充電時に負極側に掃き出しますが、この際に結晶の収縮が起こり、それが電極自体や接合面の劣化を招きます。
正極材料の結晶構造を家に例えればわかりやすです。リチウムイオンは家の中に住む人で、家の骨格を保つのは柱であり壁になります。 3元系でエネルギー密度が高いのは、結晶内に多くのリチウムイオンが存在するためで、その分、家の柱は細く壁は薄くなります。 リチウムイオンが充電時に出ていくと、激しい収縮が起こり、場合によっては家がつぶれてしまいます。 皆さんのパソコンで電池を長持ちさせたい場合は、満充電を避けて充電を80%程度にとどめるのは、20%位のリチウムイオンを家に残して天井を支えもらうためです。 こう考えると、LIBの使用上の注意として知られている、満充電で長時間の放置すると電池の劣化が進行する理由もわかります。

LIBのサイクル寿命を延ばすために開発されたのがリン酸鉄系の正極材料です。家の柱を太くし壁を厚くすることで、リチウムイオンが全部結晶から出ても、家がつぶれないようにしました。 しかし、柱を太くし壁を厚くした分、リチウムイオンの入る量は少なくなるので、エネルギー密度は3元系に比べれば落ちます。 チタン酸系はさらに家を上部にしてサイクル寿命を延ばした正極材料です。

3種類の正極材料の使い分けは、小型軽量が要求されるノートパソコンやスマホ用には3元系、エネルギー密度とサイクル寿命のバランスが要求されるBEV用にはリン酸鉄系、 エネルギー密度よりもサイクル寿命が要求される定置型バックアップ電源にはチタン酸系が使われるようなります。しかし、原理的にエネルギー密度とサイクル寿命がともに優れた材料は作ることができません。

全固体電池の場合は、電解質も固体で電極材料も固体ですから、固体同士の接合が必要です。しかし、電極材料の方は充放電ごとに膨張収縮を繰り返すので、固体界面にはクラックが発生し、 それによりトンネル効果が期待できないイオンの移動に支障をきたします。その結果、液体電解質に比べ、電極材料は同じでもサイクル特性の劣化が非常に早いという問題が生じる可能性があります。 これは、原理的な問題なので解決は困難です。唯一の方法は電解質のヤング率を落として柔らかい材料を使うことですが、その延長線には液体電解質があります。 そうなるとリチウムイオンの輸率が落ちるので、全固体のメリットを失う可能性があります。

最近のリチウム原料の高騰から、安価なナトリウムを使った電池の開発が求めれています。LIBの構造でナトリウム型の電池はできるでしょうか? その答えは原理的に難しいになります。図2に示したようにリチウムイオンはリチウムイオンより大きいので、まず、ナトリウムイオンが出入りできる正極材料を探すのが難しいです。 仮に、見つけたとして大きなナトリウムイオンが結晶中に入る量は少ないのでエネルギー密度は低くなり、また、大きなナトリウムイオンの出入りで結晶の膨張収縮は大きくなりサイクル寿命は短くなります。 すなわち、ナトリウム型はリチウム型よりもエネルギー密度もサイクル寿命も短くなると予想されます。


図3 2次電池とキャパシタの劣化

LIBに限らず一般に2次電池の劣化を抑えるのがいかに困難かを示します。2次電池では、初期状態から充電し放電をしたら元の状態に完全に戻らなければなりません これが完全でなければ劣化したことになります。今仮に1回の充放電後に99.9%元の状態に戻ったとします。 普通に考えればこれは良い出来ですが、この電池で充放電を1000回繰り返すと特性は0.999の1000上で0.38まで落ちてしまいます。このレベルではとても実用にはなりません。 このことから劣化のない2次電池をつくることなど、ほんとんど不可能なことがわかります。

これに対しキャパシタは原理的に劣化しないはずですが、液体電解質を用いた電気二重層キャパシタは実際は劣化が起こります。 この原因は、大電流での充放電の繰り返しにより液体電解質が変質したこと、あるいは、わずかな水分の吸収による液体電解質の劣化です。 つまり、電気二重層キャパシタの劣化は液体の電解質を用いているために起こります。

それでは電気2重層キャパシタの液体電解質を固体電界質に変えたらどうなのか?
そうです、劣化はしないはずです。


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