エナジー ストレージ マテリアルズは蓄電用HV固体イオンキャパシタ(HV-SIC)の技術指導を行うベンチャー企業です





Top Page(概要)
 代表者の紹介
研究開発の背景
 IPCC第6次報告書の抜粋
 温暖化による異常気象
 温暖化による森林火災
 欧州のエネルギー危機と再エネ
 日本のエネルギー自給率
 BEV普及の障害
 再生エネ普及の障害(太陽光)
 再生エネ普及の障害(洋上風力)
 蓄電デバイスはカンブリア紀
 送電網とインターネットは同じ
技術の概要 (専門知識が必要)
 電池とキャパシタの比較
  熱力学的にみると
  エネルギー密度
  加熱・発火の問題
  劣化の問題
  急速充電 直列と並列
  LIBは環境に優しい?
 各種キャパシタの比較
  可能性のあるキャパシタは
  MLCC
  反強誘電体キャパシタ
  電気二重層キャパシタ
  結論:ラゴーンプロット
 HV固体イオンキャパシタ
  巨大分極の発生原理
  固体電解質の利点
  基本コンセプト
  実験による原理検証
  Li→Naによる脱中国原料
  性能予測と目標
  製造プロセス案
 キャパシタの弱点:保持特性
 キャパシタは超高収益ビジネス
 半信半疑の方へ
応用の展望
 300Wh/kgが実現した場合
  日本製PHVが世界を席巻
  充電ステーションは日本製に
  太陽光発電と社会問題の解決
  原子力発電の出力調整と安全性
 3000Wh/kgが実現した場合
  風力でエネルギー自給自足
  全ての乗り物は電動化
  ヒューマノイドは次世代産業
  軍事技術に応用すれば(1)
  軍事技術に応用すれば(2)

3000Wh/kgが実現した場合:洋上風力発電でエネルギー自給自足


このページに書いてあること

 1) 非係留式洋上風力発電が地球温暖化阻止の切り札
 2) 送電には蓄電キャパシタを積んだ電力タンカーを使用
 3) 核融合発電が実現する前ではこれが脱炭素の唯一の方法


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浮体式洋上風力発電は、再生可能エネルギーの切り札として世界中で注目されています。 しかしながら、設置が可能な遠浅の地形が限られているために、主に北ヨーロッパと中国に設置場所は限られています。 また、普及のための大きな問題は、地形だけでなく送電線と変電設備の設置に大きなコストがかかることです。
これらの問題は、非係留式の浮体式風力タービンで解決できる可能性があります。



図1 非係留式洋上風力タービンと外洋での洋上風力発電クラスター

図1左上は、現在使われている浮体式風力タービンです。ワイヤーで海底に係留するため水深は100m以下となり、設置場所が限定されるという問題があります。 また、風力タービンから陸地まで送電線を設置し、さらに、変圧器で電圧変換してから系統に接続するのにコストがかるため、洋上風力発電の電力コストは割高となります。 日本の場合、洋上風量発電の適所が北海道の西海岸で、送電網がないために日本海に海底ケーブルを敷設する計画が出されていて、そのコストは1-2兆円と言われています。 さらに、係留式の浮体式風力タービンは、地元の漁業に影響を与える恐れがあり、漁業関係者との調整も大きな課題となります。

これらの問題は係留式をやめて非係留式とし、風力タービンを外洋に設置すればすべてが解決します。 当然、ここで問題となるのは送電方法です。 唯一の方法は、エネルギー密度の高い蓄電デバイスを船舶に搭載し、海上での充電、陸地への移動、陸地での放電を繰り返すことです。 この船舶を電力キャリアと呼びます。電力キャリアで採算を取るための蓄電デバイスのエネルギー密度は、原油タンカーで採算が取れていることを考えれば、原油タンカーの燃料である重油と同じ位のエネルギー密度ということになります。 重油のエネルギー密度は10,000Wh/kg程度で、内燃機関のエネルギー効率は40%程度なので、電気エネルギーに換算すれば4000Wh/kgとなります。 したがって、省エネ技術を駆使すればエネルギー密度3000Wh/kgのキャパシタでも採算は取れるはずです。

次に非係留浮体式風力タービンは、潮の流れにより設置場所が移動してしまう問題があります。 このため、GPS信号に基づき風力タービンを定位置に固定するためには小型の推進装置が必要になります。推進装置に必要なエネルギーを計算します。
大型タンカーの燃費は7m/L程度らしいので、風力タービンを潮の流れに逆行して固定するための燃費を大型タンカーの倍の14m/Lとします。 潮の流れの平均値を秒速1mとすると、この流れに逆らって風力タービンを定位置に固定するには毎秒0.071Lの重油が必要になります。 重油の発熱量は9200kcal/Lなので0.071Lでは657kcal(2760kJ)となり、内燃機関の熱効率を40%とすると電気エネルギー換算では1100kWとなります。 風力タービンは最大級の20MWとし、設備使用率を40%とすると平均発電量は8MWとなるので、1100kWはこの約14%となります。
非常にラフな計算ですが、上の計算に誤りがなければ、風力タービンで発電される電力を蓄電し、その14%程度を使って推進装置を動かせば風力タービンを海上の一定位置に固定することができます。 しかし、14%は大きすぎるので、推進装置の設計上の工夫、潮の流れが遅く風力が安定した場所を選ぶことで設備使用の向上を図るなどにより、この値をなるべく低くすることが必要になります。

風力タービンは海中に蓄電キャパシタをつり下げていて電力はそこに蓄電されます。ここでキャパシタがメンテナンスフリーという利点が活かされます。 風力タービンには最大級の20MWクラスを使用します。これは絶対に国産でなければなりません。 この大型風力タービンを100基並べると総出力は200万kWとなり、設備使用率を風力発電の平均値である40%とすると 平均出力は80万kWになります。 原子力発電所の出力は100kWで、設備使用率を75%とすると平均出力は75万kWとなります。つまり大型風力タービン100基のクラスターの出力は原発1基分と同程度になるわけです。 大型風力タービン100基を一列に並べると直線距離として80~100kmが必要になります。 このことからも、いかに原子炉のエネルギー密度が高いかがわかります。

電力キャリアはなるべく大型の方が採算性は良くなります。原油と同じ20万トン級が理想的です。 この電力キャリアで運ばれる電力を受けるのは海岸に近い廃炉が決まった原子炉跡地が良いです。 例えば、太平洋側では福島第一原発です。原発には大都市へつながる大容量の送電線が既にあるので、海岸に大型キャパシタ施設を作り、電力キャリアで運ばれる電力をそのキャパシタに充電します。

この風力発電クラスタのコストについて考えます。現在、原発1基のコストは約1兆円と言われています。しかし、近隣住民の理解を得ることが、今後、さらに困難になっていくと予想されます。 20MW級風力発電タービン100基、電力キャリアー、海岸での蓄電キャパシタ設備のコストは、おそらく3兆円程度にはなりますので、原発よりは大幅に割高になります。 このコストを電気料金で支払ったら採算はとれないので、国の補助金で作るしかありません。 これにより国の財政は圧迫されますが、この設備は日本企業しかできないので助成金は言ってみれば景気対策費のようなものです。

例えば、毎年5クラスターを設置すれば経費は15兆円かかりますが、その分GDPは増加しますし、増設に従って化石燃料の輸入は減るのでGDPの向上には2倍の効果があります。 それだけではありません。この設備は世界中で設置が可能なので輸出することができるのです。このれもGDPの増加に大きく寄与するはずです。 地球温暖化の抑制には、開発途上国での脱炭素への取り組みが必要ですが、原発を輸出するのは核拡散や対テロの問題で簡単はありませんし、核廃棄物の問題も発生します。 しかし、風力発電クラスタではそのような問題は発生しません。

電力キャリアは、例えば、送電の問題で頓挫したサハラ砂漠での太陽光発電に復活の機会を与えます。北アフリカの海岸まで送電線を引けば、そこから電力キャリアで例えば英国などに電力を輸送できます。 このように考えれば、日本オリジナルの洋上風力発電クラスターの技術は世界から称賛をもって受け入れられるはずです。



図2 非係留式洋上風量発電は世界中の海が候補地

浮体式洋上風力発電は、再生可能エネルギーの切り札と期待されていますが、実際に運用が進んでいるのは、図2のように北ヨーロッパと中国沿岸しかありません。 これに対し、非係留浮体式の洋上発電クラスターは地形を選びませんので、図中の青い線で示したように世界中で設置が可能です。
従来までの洋上風力発電整備の設置には、現地で海底調査による送電線設置ルートの選定やその後の工事など、現地での作業が主になります。 しかし、非係留式は全く異なります。日本国内の工場で設備は作り、それを現地に運んで組み立てるだけです。つまりモジュール化が可能なのです。 これにより国内の雇用は確保され、非常に高収益なビジネスになるはずなので給与の向上にも寄与するはずです。

地球温暖化を抑制すためには再生可能エネルギーの大規模な普及し、発電の脱炭素を実現しなければなりません。

脱炭素を実現する唯一の方法が、高性能蓄電キャパシタを用いた非係留浮体式洋上発電クラスターと電力キャリアによる送電です。 核融合が実現しない中で、もしも他の方法がひとつでもあるなら、是非、教えてほしいと思っています。


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