エナジー ストレージ マテリアルズは蓄電用HV固体イオンキャパシタ(HV-SIC)の技術指導を行うベンチャー企業です





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 HV固体イオンキャパシタ
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  製造プロセス案
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 キャパシタは超高収益ビジネス
 半信半疑の方へ
応用の展望
 300Wh/kgが実現した場合
  日本製PHVが世界を席巻
  充電ステーションは日本製に
  太陽光発電と社会問題の解決
  原子力発電の出力調整と安全性
 3000Wh/kgが実現した場合
  風力でエネルギー自給自足
  全ての乗り物は電動化
  ヒューマノイドは次世代産業
  軍事技術に応用すれば(1)
  軍事技術に応用すれば(2)

3000Wh/kgが実現した場合: 軍事技術へ応用すれば(2)


このページに書いてあること

 高性能蓄電キャパシタにより迎撃困難な新型魚雷を作る
 ことができる。この魚雷は海に囲まれた日本の防衛力の
 向上に寄与すると考えられる。


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魚雷への応用

かつての戦争では海戦の主役は、雷撃機から投下する航空魚雷や潜水艦からの魚雷攻撃でした。しかし、現在では海戦の主役の座は魚雷から対艦ミサイルに移っています。 これは、誘導装置の精度の差によるものと思われます。水中を移動する魚雷の誘導には音響ソナーが使用されますが、空中を移動するミサイルの誘導にはレーダーが使用されます。 また、空中では無線通信による誘導も可能です。このため遠距離から発射した場合の命中精度は魚雷よりもミサイルの方が高くなります。
しかし、現在でもなお魚雷が装備品として残っているのは、魚雷には魚雷のメリットがあり、そのメリットは対艦ミサイルでは得られないためです。



図1 魚雷への応用

現在使用されている魚雷には、長魚雷と短魚雷があります。
長魚雷は潜水艦から発射される水上艦攻撃用の大型魚雷です。動力はOtto fuel II呼ばれる1液型燃料で駆動される内燃機関です。 18式長魚雷の動力源に液体水素と液体酸素の燃焼タービンが使われるという記事がありましたが、魚雷発射管内でタービンを始動するときに水素と酸素の異常燃焼で爆発が起きれば、 取り返しのつかない重大事故になるため、安全性が確立したOtto fuel IIが今も使われていると推測しています。 長魚雷のメリットは何と言っても破壊力の大きさです。磁気センサを使って艦底で起爆すれば、長魚雷1本で大型艦を使用不能にできます。

その反面、長魚雷の弱点は誘導方法です。パッシブソナーの有効範囲は30km程度なので命中精度を上げるには、母艦である潜水艦がその距離まで近づく必要があります。 これは潜水艦にとっては危険な距離なので、実際には50km以上の距離から有線誘導で発射します。 現在の主流はファイアー アンド フォアゲットであるので、旧式な誘導方法ですが水中では無線が使えないので仕方がありません。 発射後に潜水艦が発見されるような場合には、信号用ワイヤーを切断して回避行動にはいるので、魚雷は誘導を失い命中精度は著しく低下します。
しかし、有線誘導とパッシブソナーが有効に機能し、約7kmのアクティブソナーの有効範囲に入り音響画像で目標艦を捕捉すれば、おとりであるダコイに惑わされることもなく目標艦へ向かいます。 この状態になると捕捉された艦船は長魚雷からの攻撃を回避することはできません。つまり長魚雷は抜群の破壊力と近距離での誘導方法には優れていますが、30km以上の遠距離での誘導方法に弱点があるということです。

短魚雷は、誘導装置付き爆雷とも言えます。目標である潜水艦の近くから水中に発射し、ソナーで目標をとらえて目標に衝突し起爆します。 命中精度は高いですが、作薬量が30kg程度と少ないので船舶用には使用できません。



図2 旧日本海軍酸素魚雷と高性能蓄電キャパシタを使う新型魚雷の構造

高性能蓄電キャパシタを使うことで長魚雷の構造は大きく変わります。 Otto fuel IIを燃料とした内燃機関は図2の酸素魚雷よりはエネルギー密度は高いでしょうが、射程も長くなっているので魚雷の大半は燃料と内燃機関を含む推進装置で占められていて、 炸薬は先端の一部だけになっているはずです。 おそらく燃料と推進装置を合わせた時のエネルギー密度は1000Wh/kgをかなり下回ると予想されます。

エネルギー密度3000Wh/kgの蓄電キャパシタと電気モータの組み合わせは、構造がシンプルなため軽量化と小型化が可能となり、作薬量を300kgとしても航空機で運搬できるようになります。 この新型魚雷により、目標艦船への非常に有効な攻撃が可能となります。



図3 新型魚雷の運用方法

新型魚雷は、大型電動ドローンもしくは大型ミサイルの弾頭として目標艦船の近くまで運搬され、水中に投下されます。いわば無人の雷撃機です。 ここでは、ドローンを使用した場合について説明します。

魚雷運搬用のドローンも高性能蓄電キャパシタにより電気モータとプロペラで飛行します。 シースキミングと言われる海上すれすれの高度を飛行すれば、目標艦船からのレーダーでは捕捉できず、早期警戒機(AEW機)のみで補足可能です。 しかし、ドローン上面をステルス形状とすれば海面での電波の反射もあるので、上空からのAEW機のレーダーでの捕捉は極めて困難になると考えられます。 電気モーターでのプロペラ機は赤外線センサーにも反応しません。

目標艦から約10kmのCIWSの射程外で魚雷を水中に投下します。 投下前に衛星からの情報で目標艦の位置と速度から計算される未来位置を魚雷に入力しておけば、高い精度でパッシブソナーでの誘導ができます。 目標艦に近づいたらアクティブソナーの音響画像追尾に切り替えれば、目標艦の回避はほぼ不可能になり、艦底での磁気センサによる起爆で致命的な損害をうけることになります。

このようなことを長々と書いたのは、この魚雷攻撃を迎撃する方法は理論的に存在しないように思えたためです。 通常の兵器では、攻撃側と防御側は鉾と盾の関係で、攻撃側が進歩すれば防御側も進歩します。対艦ミサイルはこの範疇に入ります。 しかし、ここで述べる新型魚雷の攻撃は迎撃が不可能に思えます。
まず、ドローンで運搬中ですがシースキリングなので目標艦からは捕捉できず、AEW機でも捕捉は困難です。 仮に捕捉されても迎撃ミサイルの到達には時間がかかるので、その前に魚雷を投下することは可能です。
海中での迎撃ですが、これはさらに困難になります。電気モーターで無音高速推進する魚雷をソナーで捕捉するの容易ではありません。 仮に捕捉できても迎撃の手段は迎撃魚雷のみとなります。重要なことは迎撃魚雷の速度が攻撃側の魚雷よりも遅いことです。 また、迎撃魚雷の内燃機関による推進では、自らが発するエンジン音のためパッシブソナーの精度は著しく低下するので、無音高速推進する魚雷を捕捉し遭遇した上で破壊することは、よほどの幸運がない限り不可能です。 つまり、新型魚雷を投下されたら目標艦はなすすべがないということです。

実際の戦闘では、単独の魚雷だけでなく、潜水艦から発射する長魚雷や対艦ミサイルが立体的かつ複合的に攻撃をしかけ、長魚雷あるいは新型魚雷を一本でも見落とせばその艦の命運は尽きます。 有事の際に敵国の艦隊が領海内に侵入し防衛出動となれば、おそらく数時間の内に相手の艦船のほとんどは使用不能になるのに対し、自衛隊側の損害はゼロという結果になるはずです。
この結果が予想されれば、誰も戦闘を始めようとはしません。どの国の艦隊も日本の領海には入らないということです。 日本は周囲を海に囲まれているので、艦隊が領海に入れなければ日本を侵略することは不可能です。 そしてこの新型魚雷は敵基地攻撃などではなく100%防御型兵器なのです。

遠い将来の話ではありますが、HV固体イオンキャパシタ(HV-SIC)が日本の防衛の何らかのお役に立てば、提案者として苦労した甲斐があったと思っています。


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